デイリーニュースジャパン
2018/05/14 に公開

アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦で日大の選手の悪質な反則で関西学院の選手が大けがをした問題。日大の関係者がJNNの取材に対し「今回のプレーは監督からの指示でやってしまったものだ」と証言しました。

 パスを投げ、仲間のプレーを見守る青色のユニフォームを着た関西学院大の選手。突然、背後から突進してきた日大の選手から膝の辺りにタックルを受け、倒れこみます。

 これは、今月6日、東京都内で行われたアメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学=関学の定期戦で、日大の守備選手が関学のクォーターバックに悪質な反則をした瞬間の映像です。この反則で関学の選手は負傷退場し、足にしびれが出るなど全治3週間の大けがをしました。

日大の選手はこのプレーの後もさらにボールを持っていない選手にタックルしたり、関学の選手を突き飛ばしたりとラフプレーを繰り返したためわずか5プレーで退場処分となりました。


5/16(水) 6:11配信 THE PAGE

なぜ悪質タックルをした日大選手は善悪を判断できずに暴走したのか?(写真はイメージで当該選手は一切関係ありません。写真・アフロ)

アメリカンフットボールの関学大対日大の定期戦(6日・アミノバイタルフィールド)において日大の守備選手(3年)が関学のQB選手(2年)に悪質な反則タックルを行い、全治3週間の負傷を負わせた問題についての疑問が今なお判明しない。

 日大の守備選手は、プレーを終え無防備な関学のQB選手に背後から“暴力”とも取れるタックルを仕掛けた。スポーツマンシップにもとる極めて悪質で生命にさえかかわる危険な反則タックルが、なぜ行われたのか、という経緯の部分が、明らかになっていないのだ。

 日大は記者会見も開かず、内田正人監督が“逃げて”事情を説明しないため、現在、断片的な情報だけが飛び交っている状況。日大が15日、関学大の抗議文に対して返答した文書内で、それが明らかにされているのかもしれないが、そこに監督、コーチの指示があったのか、或いは、選手の自発的な行為だったのか。監督、コーチの具体的な指示がなくとも、選手が、そう受け取るような背景があったのか。

 ミーティングを重ね、コーチの指示の下動くアメフットの競技特性と、反則後のサイドラインでのチームの当該選手に対する対応の姿からも見て、当該選手が勝手に暴走しただけとは考えにくい。だが、一方で、さすがに「痛めてしまえ!」までの具体的な指示が監督から“春の定期戦”で当該の守備選手に出ていたとも考えられない。ただ、当該選手が、そういうプレーに暴走せざるをえない状況に、指導者及び、チームの体質が追い込んでしまっていたという可能性は否定できないだろう。

 日本におけるスポーツ心理学の権威で、これまでプロチームや五輪柔道チームのメンタルトレーニング部門を担当、アメリカンフットボール部も指導したこともある東海大学体育学部の高妻容一教授は、当該選手の心理をこう分析する。

「ここまでの報道によって知りえた情報とプレー映像を見ての推測であり、あくまでも一般論としての私の意見であることを承知していただきたいのですが、あの選手は悪質で危険なタックルを行った後にも、つかみあいをしているような場面がありました。アンスポーツマンライクコンダクトと呼ばれる反則行為です。選手はキレているように見えました。非常にメンタルの弱い選手に感じました。日大の監督さんの“あれくらいやっていかないと勝てない。私の責任”というコメントなどから察するに、選手は相当なプレッシャーを感じていたと考えられます。もちろん個人差はありますが、チームの指導者がスパルタ式に圧力をかけて、その雰囲気や、空気からメンタルが弱くて精神的に追い詰められてしまった選手は、その行為の善悪を区別することができなくなる場合があります」

 環境や状況、そして精神状態によっては、その行為の善悪さえ判断できない状況に追い込まれるケースがあるというのだ。

 日本のスポーツ界には、中、高、大学の“部活”内の体育会系気質が根強くはびこってきた。この体質が、しばしば、暴力問題やパワハラという問題を生み出している。

 日大フェニックスは、カリスマ的な存在感を持っていた故・篠竹幹夫監督が、レギュラーを全員合宿所に入れて、徹底的にしごく超スパルタ方式で黄金期を作ったことで知られる。「犠牲・協同・闘争」のチーム方針の元、集中力を高め、甲子園ボウルで優勝を重ねて“サムライフットボール”と賞賛された。内田正人監督は、コーチとして故・篠竹監督を支えてきた人物である。

 高妻教授は、スポーツ心理学の観点から、選手が「ノー」と言えない日本独特の根性礼賛主義、指導者の古い経験主義などの文化、体質を問題視する。

「私の話で恐縮ですが、空手部時代に指導者に“負けるくらいなら相手をノックアウトしてこい!”と言われて、その通りにしようとしたことがありました。今から40年以上も前の話です。前近代的な指導体系、チーム体質であるならば、選手が“指導者に言われたことをやらなかったときにどうなるか”という例をずっと間近で見ていくことで、よりプレッシャーを強く感じることになります。選手は、“できない”“やれない”と言って信用、立場を失うことを恐れます。ネガティブになります。そうなるとノーとは言えないのです。アメフットやラグビーといったコンタクト競技は格闘技的要素が強いものです。スポーツと暴力の境界線を守るためには、なおさらメンタルコントロールが必要になってきます。本来は、そのプレーをする理由を指導者が説明できなければなりません。私は、それを科学的根性論と呼んでいますが、目的を達するために何をどうするべきかをすべて説明し、選手が理解、納得した上でトレーニングという準備を行い、ミーティングでイメージを高め試合に入ることが必要なのです。そういった作業を省き“チームが勝つために言われたことをやれ!”というのは、何十年も前のティーチングであり、とてもコーチングとは呼べないものです。選手をポジティブな考え方にするには、まず指導者がコーチングを勉強しポジティブな環境に変えることが重要になります」
 
 そして高妻教授は、こうも続けた。
 
「アメリカのカレッジフットボールの世界では、リーグが練習時間や年間の活動時間を制限しています。しかもコーチはプロです。例えばフロリダ州立大のアメリカンフットボール部では、その限られた練習時間内に、いかに効率的なトレーニングを行い、戦術を磨くかということが先鋭化されています。メンタルトレーニングに関しても時間を割きます。夢や目標を達成するために何をどうすればいいか、学生スポーツの意義とは何かをコーチングしていけば、必然的にスポーツマンシップというものを理解するようになってきます。日大アメフット部の内情をよく知りませんので、あくまでも一般論としてですが、前近代的なスパルタ、間違った根性論がはびこるチームでは、しばしば、こういったメンタルに起因する問題が起きるのです」
 
 実は、何十年も前から日本の多くのアメフットの強豪校の指導者たちは、毎年のようにアメリカの名門校などに留学して、戦術だけでなく、コーチング、チームマネジメントから、そのリクルート手法までを学んで持ち帰り、チーム強化につなげてきたという歴史がある。立命大のように、全米の大学に学び、クラブハウスやトレーニング施設などの環境までを整えたチームもある。いわゆるインテリが多く、どちらかと言えば学生アメフット界は、古い体育会系の根性論とは一線を引いてきたという傾向があったのだが……それにもチーム差があったのも事実である。
 
 日大の悪質タックル問題が、なぜ起きたかの原因究明は、あらゆる角度から徹底して行わねばならない。関東学生連盟だけに任せるのでなく、全日本協会のレベルで調査、議論を行う必要があると思う。ひいては、それが、日本の学生スポーツ界が抱えている課題や、悪しき伝統を一掃するための重要な問題提起になるのかもしれない。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)


日大アメフト部 内田正人監督の雲隠れの理由! 常務で人事部長だから?
https://chunen-metabo-diet.com/incident-19/#2