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愛媛県文書で示された助言内容とその後の結果

 学校法人「加計学園」による獣医学部新設を巡り、愛媛県職員らと柳瀬唯夫首相秘書官、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(いずれも当時)の面会を記録した県作成の文書が、政府内でも見つかった。

県と今治市が国家戦略特区に申請するまでの経過と、文書の記載内容には符合する部分が多い。「記憶」を頼りに面会自体を否定し続ける政府側は、ますます苦しくなってきた。

 農林水産省で発見された文書は2015年4月3日付。その前日、愛媛県と今治市職員、加計学園幹部が藤原、柳瀬両氏と個別に面会した際に受けた助言を中心に記載されている。

 県と市は14年までに計15回、構造改革特区で獣医学部新設を申請し、いずれも却下された。

文書によると、藤原氏は「これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と述べ、遅くとも15年5月の連休明けから募集を開始すると学園側に伝えた。柳瀬氏も「国家戦略特区の方が勢いがある」と述べた。

 県職員は面会内容を中村時広知事に報告し、県は国家戦略特区申請に向けた提案書を策定する方針に転じた。

国家戦略特区の募集開始は15年4月28日。県と市が獣医学部新設を申請したのは6月4日だった。

 内閣府に提出した申請書類では「これまでの国立大学の研究者養成、私立大学の臨床獣医師養成と異なる公共獣医事を担う第三極の国際水準の獣医学部を新設する」と狙いを説明。バイオテロを想定した危機管理など「新しい分野への対応」もアピールした。

これは、柳瀬氏から「既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出す」ようアドバイスされたことを踏まえたとも読める。申請時の添付資料は表紙を含めて4枚。藤原氏は「ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作ってほしい」と県職員らに求めていた。

 柳瀬氏は「本件は、首相案件となっており、藤原次長の公式のヒアリングを受ける形で進めていただきたい」と述べたとされる。県と市は申請翌日の6月5日、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)によるヒアリングを受けた。WGには事務局として藤原氏も出席した。

 政府は16年1月29日、今治市を国家戦略特区に正式指定した。それ以降、加計学園は事業者認定を目指し、政府への働きかけを強める。学園の加計孝太郎理事長は16年8月23日と9月6日、当時の山本有二農相、松野博一文部科学相をそれぞれ訪問。加計氏から獣医学部の件を「よろしくお願いしたい」と言われた山本氏は「公正中立にやる」と答えたという。

 それから間もない9月9日、首相官邸で国家戦略特区諮問会議が開かれた。民間議員は「今後の進め方」と題する資料を用意し、「例えば、獣医学部の新設は極めて重要だが、岩盤が立ちはだかっている。強力に解決を推進したい」と発言した。

 これについて、安倍晋三首相は昨年7月25日の参院予算委員会で「(加計氏は)担当の大臣に申請の意思を説明したのだろう」と述べつつ、「私は昔からの友人なので会うことはあるが、その地位を利用して彼が何かを成し遂げようとしたことはなかった」と自身の関与を否定した。首相は一貫して、獣医学部新設計画を知った時期を、特区諮問会議が事業者認定した「17年1月20日」と説明している。【青木純、高橋克哉】

面会否定、苦しい弁明

 立憲民主党の逢坂誠二氏は13日、「首相官邸が水戸黄門の印籠(いんろう)のようなものを愛媛に与えた証拠ではないか」と述べ、文書の信ぴょう性は高いとの見方を示した。現在は経済産業審議官の柳瀬氏は同日、記者団から「記憶の限りというのは変わっていないか」と問われ、「変わりません」と面会を重ねて否定したが、与党は「国会招致やむなし」という雰囲気になりつつある。

 招致が実現した場合、まず焦点になるのが、柳瀬氏が15年4月2日、本当に愛媛県職員らと会っていないのかという点だ。

 仮に柳瀬氏が面会を認めたら、「首相案件」発言の真偽が次に問題になる。柳瀬氏は「首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ない」と否定するが、面会出席者は発言があったと認めている。

 文書には、首相と加計理事長が会食した際、獣医学部新設計画に下村博文文科相(当時)が不満を持っていたことが話題になったと記されている。面会で学園幹部から意見を求められた柳瀬氏は「課題への取り組み状況を整理して、文科省に説明するのがいい」と助言した。

事実なら、17年1月20日に知ったという安倍首相の国会答弁が覆る可能性が出てくる。立憲民主党の福山哲郎幹事長は13日の党会合で「1月20日に知ったということ自体、ほぼ事実ではないと明らかになってきた」と指摘した。

 農水省で見つかった文書は15年4月3日付、既に報じられた文書は4月13日付で、面会を踏まえた愛媛県の対応を記した部分にも相違がある。これについて中村知事は13日、「3日は会議(面会)の直後にメモした日付だろう。13日は私への報告の直前に用意した文書だ」と述べ、いずれも県職員が作成し、整合性は取れていると説明した。

 文書を調査中の文科省では、中堅職員が「『総理のご意向』文書はうやむやにしたが、他の役所にも広がってごまかしきれなくなっている。どの官僚も、政権の言い逃れに付き合いたくないという思いは同じではないか」と漏らした。【朝日弘行、伊澤拓也、花澤葵】