毎日新聞2018年3月30日 東京朝刊

 2018年度予算が成立し、通常国会は後半戦に入った。

 政府・与党は6月の会期末までに「働き方改革」関連法案や、カジノの設置を可能にするための法案などの成立を図る構えだ。

 森友学園に関する文書改ざん問題は、真相がまったく解明されていない。なのに、政権側は佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問で政治的なヤマは越えたと強引に解釈している。

 改ざんを指示した人物や実行者の特定は、財務省の調査や大阪地検特捜部の捜査に委ねるつもりらしい。

 自民党は何か考え違いをしているのではないか。今回の改ざんは国会こそが当事者であり、与野党の政争レベルをはるかに上回るからだ。

 同じ自民党でも小泉進次郎筆頭副幹事長はこんな認識を示している。

 「平成の政治史に残る大きな事件と向き合っている」。25日の自民党大会後、記者団に語った。私たちもまったく同感だ。

 かつて自民党政権を揺るがしてきたのは巨額の金銭スキャンダルだった。首相の犯罪が問われたロッキード事件はその代表例だ。

 平成の政治はこうした金権政治の後始末で始まる。竹下内閣を直撃したリクルート事件で国民の政治批判は頂点に達し、衆院に小選挙区制が導入され、政党助成制度が生まれた。橋本内閣以降は省庁の再編と首相官邸機能の強化が進められた。

 確かに大規模な贈収賄は影をひそめたように見える。官邸の調整力も増した。しかし、今の安倍晋三政権で目につくのは、「政治主導」を飛び越えた首相権力の肥大化だ。

 今回の改ざんは、国会を欺くのをいとわないほどに官僚の感覚がまひしていることを示した。裏返せば役所を組織的にまひさせるほど絶大な力が働いたということだろう。

 ここに平成の政治史における本件の特異性がある。政治改革に伴う極端な負の産物というほかない。

 すべての与野党議員に問いたい。

 国会議員は国民の代表者であり、国会こそが行政権力を生み出すすべての源だ。その国会に行政府が虚偽の文書を提出し、報道がなければ闇に葬られていた事態の処理を、国会がやらずして誰がやるのかと。

 被害を受けたのは、この国の民主的な政治システムである。