キャプチャ 
前川喜平前事務次官=2018年3月13日、川辺和将撮影

 文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市立中に講師として招かれた際の授業内容や録音について、同省が市教育委員会に報告を要請していたことが15日、分かった。

文科省は「問題ない」としているが、国が個別の授業に絡み、講師の言動に関わる内容を細かく調べるのは異例で、批判の声も上がりそうだ。

 文科省や市教委によると、2月に前川氏がこの中学の校長に招かれ、総合学習の時間の講師として全校生徒や地元住民らに授業をした。内容は生き方やキャリア教育、夜間学校についてだったという。

 報道でこの授業を知った文科省は今月、市教委に対しメールで、前川氏が文科省の組織的天下り問題で引責辞任したことや、「出会い系バー」に出入りしていたと報じられたことに触れた上で、授業の内容や目的、講師を依頼した経緯、学校の見解など10項目以上を質問。授業内容の録音データもあれば提出するよう要請した。

 市教委は、録音データは出さず、学校がまとめた回答を文書で報告した。これに対し文科省は、前川氏が天下り問題に主体的に関わって処分を受けたことを事前に確認していなかったのでは、との指摘を送ったという。

 教育関係の法律では、学校教育に対して指導や助言をするのは主に教委で、国の役割は学習指導要領など、全国共通の教育基準を作ることや、教育条件の整備と想定している。文科省の担当者は今回、個別の授業内容を調査したことに対し「事実関係を確認しただけで、内容に口を出したわけではない。問題はなかった」としている。

 前川氏は昨年1月に発覚した天下り問題で、文科事務次官を引責辞任した。同5月に加計学園を巡って「総理の意向」などと記された記録文書の存在が明らかになると、記者会見で「公正、公平であるべき行政の在り方がゆがめられた」と発言し、国会にも参考人招致された。

明らかに過剰な干渉 現場の委縮招く

 藤田英典共栄大教授(教育社会学)の話 授業内容が保護者から問題視され、さらに教育委員会のレベルでは対処できない場合ならまだしも、今回のケースは明らかに過剰な干渉だ。授業内容が知りたいのなら、前川喜平氏本人に聞けばいい。

文部科学省が現場に問い合わせれば萎縮を招く。現場の裁量権を抑圧しようとする意図すら感じる。天下りの問題はあったかもしれないが、元文科省職員として経験豊富な人物を授業に呼んだことに目くじらを立てる必要があるとは思えない。(共同)


前川前次官の講演、録音データ提供求める 文部科学省

https://www.asahi.com/articles/ASL3H6S0QL3HUTIL04Y.html?iref=comtop_8_01
根岸拓朗、日高奈緒2018年3月16日09時58分

 名古屋市立の中学校で2月、文部科学省前事務次官の前川喜平氏が授業の一環で講演したことをめぐり、文科省が市教委に対し、前川氏を呼んだ狙いや講演の内容を問い合わせ、録音データの提供を求めていたことが15日、わかった。文科省が個別の学校の授業内容について調べるのは異例。

 前川氏は文科省の組織的な天下りの問題に関与したとして、昨年1月に辞任し、その後は学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐって「行政がゆがめられた」と発言している。

文科省教育課程課によると、総合的な学習の時間の授業で講演したことを報道で知り、前川氏が辞任したことや「出会い系バー」の利用が報道されたことを伝えたうえで、経緯や講演内容を尋ね、録音の提供を求めるメールを市教委に送った。市教委から講演内容は伝えられたが、録音の提供はなかったという。

 教育課程課は電話で市教委に、前川氏を学校教育の授業に呼ぶことは「慎重な検討が必要だったのではないか」とも伝えたという。市教委に問い合わせることは文科省の初等中等教育局で判断しており、林芳正文科相ら政務三役は関わっていないとしている。