2018年3月4日

 自衛隊版海兵隊の「水陸機動団」が今月、陸上自衛隊に誕生します。奪われた島を取り返す専門部隊ですが、その役割と課題について、考えてみました。

 水陸機動団は二個連隊、隊員二千百人規模。長崎県佐世保市で産声を上げます。その役割について、山崎幸二陸上幕僚長は会見で「離島の防衛を主体とする部隊。この新編により、主に島しょ防衛の実効性ある抑止、また対処能力が向上する」と述べています。

オスプレイも活用

 これまでの島しょ防衛は、情勢が緊迫した段階で陸上部隊を離島に事前展開し、抑止力を高めて侵攻を未然に防止するというやり方でした。

 水陸機動団も事前展開を重視することに変わりないものの、島しょを占領された場合、奪回するのを主任務としています。そのための装備として垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用車を活用します。

 奪回には航空優勢、海上優勢の確保が欠かせません。敵に空域、海域とも抑えられている状況下で上陸を敢行するのは自殺行為に等しいからです。

 以前、取材に応じた陸上幕僚監部の作戦担当幹部は「もちろん航空優勢、海上優勢が確保されていなければ、上陸しません」と断言。それならば平時に輸送して、港から陸揚げするのと同じことになり、オスプレイや水陸両用車の出番はありません。

 出番の有無に関係なく、防衛省はオスプレイを十七機、水陸両用車を五十二両、米政府から購入します。ともに陸上自衛隊がお手本とする米海兵隊の主力装備でもあります。

危険な敵前上陸はしないにもかかわらず、「殴り込み部隊」といわれる米海兵隊と同じ装備を持つのは違和感があります。

◆不足する海上輸送力

 すっきりしない印象が残るのは、水陸機動団が誕生するまでの経緯と関係しているのではないでしょうか。

 民主党政権下の二〇一一年度に改定された日本防衛の指針「防衛計画の大綱」で陸上自衛隊は一人負けしました。海上自衛隊と航空自衛隊の増強が認められる一方で、陸自は定員千人を削られ、戦車と大砲も削減されました。

 第二次安倍晋三政権下の一四年度に再改定された大綱は、冷戦期に想定した大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻が起こる可能性をほぼ完全に排除しています。陸上自衛隊が主役となるような戦争はもう起きないというのです。

 このままでは先細る一方の陸上自衛隊が着目したのは、中国による離島侵攻を想定した島しょ防衛でした。ただ、中国は尖閣諸島以外の島々について領有権を主張していません。海軍力を強めているのは事実とはいえ、その目的が沖縄の離島占拠にあると考える専門家はあまりいないことでしょう。

 それでも南西防衛、島しょ防衛を打ち出した陸上自衛隊は、全国の師団・旅団を機動運用部隊と地域配備部隊に分け、いざという場面で機動運用部隊を島しょ防衛に派遣することにしました。その先陣を切るのが水陸機動団なのです。誤解を恐れずにいえば、陸上自衛隊という実力組織の「生き残り策」のシンボルといえるかもしれません。

 付け焼き刃を裏付けるのは、輸送力が足りないのに発足してしまうことです。そもそも米海兵隊が使っている強襲揚陸艦は自衛隊に一隻もありません。

 代わりに使う「おおすみ」型輸送艦で運べる水陸両用車は一隻あたり十六両にすぎず、「おおすみ」型三隻をフル動員しても購入する五十二両は運びきれません。

 水陸両用車を満載すれば、戦車や装甲車を上陸させるのに必要なエアクッション揚陸艇(LCAC)二隻を搭載できず、戦力は決定的に不足します。

 輸送力の確保には、強襲揚陸艦などの建造が欠かせませんが、艦艇の発注元である海上自衛隊の関心は中国の水上艦や潜水艦の動向監視にあるので連携プレーは望めそうもありません。

 問題はまだあります。

 水陸機動団は本来、三個連隊なのです。いずれ三個目の連隊を発足させますが、配備先として沖縄の米海兵隊基地が浮上しています。基地の固定化につながる部隊配備を沖縄の人々は歓迎するでしょうか。

◆先行する内向き理屈

 他の組織改編も同時にあって「陸上自衛隊始まって以来の大改革」といわれますが、陸自が実際に活躍する場面は災害救援なのでは。本土を手薄にしていいのでしょうか。北朝鮮の動向も気になりますが、政府は起こりうる事態を示すことなく、「国難」を叫ぶばかり。内向きの理屈を先行させる国防政策でいいはずがありません。