平昌五輪は始まったばかりだが、どうやら北朝鮮の核問題は、文在寅大統領の見事な平昌五輪外交によって、はやくも、対話のシナリオが見えて来たようだ。

 ペンス大統領は帰国途中の政府専用機の中で、ワシントン・ポスト紙のコラムニストに語ったらしい。

 きょうの各紙が一斉に報じている。

 すなわち、文大統領はペンス副大統領に、まず韓国が五輪後に北朝鮮と対話し、米国がその後に続くことを提案し、これに米国が同意したと、ペンス副大統領が明かした、というのだ。

 もちろん、北朝鮮に譲歩したわけではない。

 文大統領は、ペンス副大統領に対し、南北対話を進めるにあたっては、「北朝鮮に対し、経済的、外交的な見返りは非核化の具体的な措置に対してのみ与えられ、対話だけでは得られないと、はっきり伝える」と言明し、それを条件にペンス副大統領は、韓国が北朝鮮と対話することを認めたというわけだ。

 ペンス副大統領は、毎日のようにトランプ大統領と連絡を取っているという。
 これはトランプ大統領の了解を得た米韓合意に違いない。

 キーワードは「非核化」だ。

 その前提が満たされる限り米国はメンツが立つ。
 しかし、北朝鮮は「北朝鮮の非核化」には絶対に応じない。

 それを文大統領も知っている。

 文大統領は、「北朝鮮の非核化」という言葉を逆手にとって、北朝鮮が「韓半島の非核化」で応酬して来た、という形をつくるに違いない。

 そして、その北朝鮮の応酬を、文在寅大統領は米国に伝え、米国の理解を求めるつもりだ。

 具体的には、ズバリ、短期的には米韓軍事演習の延期、凍結であり、究極的には米軍の韓国からの撤退である。

 そんなことを米国が応じるはずがない。

 常識的には皆、そう思うだろう。
 しかし、冷静に考えれば、米国には、ほかに選択肢がない事がわかる。

 もしこのまま米国が北朝鮮の核放棄に固執するなら、米国に残された選択は北朝鮮への攻撃しかない。

 そんなことを米国が出来る筈がない。

 それは平昌五輪で高まった民族融和の流れを真っ向から否定するものであり、北朝鮮のみならず韓国国民の反発を受ける。

 朝鮮半島全体が反米感情で団結することになる。
 何よりも国際社会が米国の攻撃を許さない。

 トランプは、韓国と北朝鮮の南北対話を、見守るしかないのだ。
 そして、その米国の意思は、平昌五輪の閉会式に明らかにされる。

 そのメッセージを伝えるのは閉会式に出席するイバンカだ。

 開会式の主役は金与正だった。

 きょう2月13日の産経新聞が特大のスクープを流した。

 すなわち、平昌五輪が開催されている江原道の崔文洵知事が、産経新聞の取材に応じてこう明らかにしたという。

 金与正氏が10日の晩さん会の席で、同じテーブルについた崔氏らに対し、「昨日までを過去の事にしましょう」と述べ、早急な南北の関係改善を訴えていた、というのだ。

 これは特大スクープである。
 北朝鮮は本気で対話へ舵を切ったということだ。

 この話がイバンカの耳に入らないはずがない。

 もし本当にイバンカが閉会式に出席するなら、和平の流れに水を差すようなことをするはずがない。

 閉会式に出席したイバンカは、南北対話の成功を米国は願う、と高らかに宣言するに違いない。

 北朝鮮と米国の二人のヒロインの手で、南北対話の開始が宣言される。

 このシナリオは、韓国と北朝鮮にとって、もうひとつのメリットがある。
 それは南北融和に中国の出る幕はない、と言う事を世界に知らしめることだ。

 北朝鮮も韓国も、中国のやり方には心底怒りを覚えている。

 つまり北朝鮮は米国に擦りよって北朝鮮への制裁強化に踏み切った中国を許さない。
 なによりも米国と通じて斬首作戦を進めようとした中国を許さない。

 一方の韓国も、米軍ミサイル導入に反発して韓国に制裁を加えた中国に怒り心頭であるに違いない。

 南北統一は、我々が米国と話し合って実現できることを中国に見せつけたいはずだ。

 かくして、北朝鮮と韓国の手で南北統一の話し合いが始まる。
 それが平昌五輪のハイライトであり、その後に続く、息の長い外交ゲームの始まりとなる。

 はたしてこのシナリオ通りに展開するのか。

 それは愚問だ。
 うまく行くも行かないも、このシナリオしかない。

 米国が北朝鮮を攻撃するシナリオは、世界を不幸にする。
 あってはならないシナリオである(了)