2018年2月9日05時00分

 自民党の憲法改正推進本部が9条改憲に向けた条文案の作成作業に入った。

 戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を維持し、自衛隊を明記する安倍首相の案を軸に検討する方針だ。

 一方、党内では石破茂・元防衛相らが2項を削除する案を主張している。

 驚かされるのは、案を提起した首相自身の国会答弁の不可解さだ。

 自衛隊明記案が国民投票で否決されたら、どうなるか。首相はその場合も自衛隊の合憲性は「変わらない」と語った。

 自衛隊を明記しても、しなくても自衛隊は合憲である――。

 素朴な疑問がわく。それならなぜ、わざわざ改憲をめざす必要があるのか。

 首相自身が言うように、歴代内閣は一貫して自衛隊を合憲としてきたし、国民の多くもそう考えてきた。

 それでも発議に突き進むなら、深刻な問題を引き起こしかねない。

 改正案の書きぶりにもよるが、仮に自衛隊明記案が国民投票で否決されれば、主権者・国民に自衛隊の現状が否定されたことにならないか。

 首相は「現行の2項の規定を残したうえで、自衛隊の存在を明記することで、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」とも述べている。

 「変わらない」ことを、なぜここまで強調するのか。

 推進本部特別顧問の高村正彦副総裁が、BS番組であけすけに述べている。

 「2項削除は無理だ。国民投票がもたない。その前に公明党が賛成しない」

 改憲の国会発議には、9条改憲に慎重な公明党の協力が必要だ。国民投票で過半数の賛成も得なければならない。

 だからこそ、2項削除案に比べ、首相案は無難だと言いたいのだろう。

 高村氏は一方でこうも語っている。「安倍さんが言っていることは正しい。石破さんが言っていることも間違いではない。この二つは矛盾しない」

 だが、両者が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。

 「変わらない」と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう「変わる」のかを国民に説明しなければならない。

 自民党の改憲論議は、深いジレンマに陥っている。