毎日新聞2018年2月3日 東京朝刊

 この説明で納得する人は、ほとんどいないだろう。

 茂木敏充経済再生担当相(衆院栃木5区)の秘書が、選挙区内で線香や手帳を配っていた問題だ。 

 茂木氏は国会の答弁で、数年間、秘書が配っていた点は認めたものの、自ら指示はしていないと強調した。線香や手帳には自分の氏名は記載しておらず、政党支部の党勢拡大を目指した活動だとも説明した。

 公職選挙法では候補者らが有権者に金銭や物品を寄付することを禁じている。政党支部の場合でも、候補者名が記されていたり、名前が類推されたりするような方法で寄付するのは禁止されている。もちろん、それが買収行為につながるからだ。

 茂木氏は氏名は記しておらず、秘書は政党支部の活動として配布したのだから違法ではないというのだろう。公選法を所管している野田聖子総務相も「直ちに氏名が類推される方法とは言えない」との見解を示している。

 ただし線香などを受け取った有権者は茂木氏からだと類推しなかっただろうか。

 野党側が秘書は配布する際、茂木氏の名刺を持参していたかどうかを質問すると、茂木氏は「その場に居合わせておらず分からない」とかわすだけで、国民の理解を得ようという姿勢には見えない。

 衆院予算委員会では安倍晋三首相が答弁している最中に、茂木氏と野田氏が閣僚席でしばらく談笑するような場面もあった。答弁のすり合わせとも受け取られかねず、不謹慎だ。与党内からも批判が出た。

 1999年、自民党の小野寺五典氏(現防衛相)が氏名入りの線香を配り、公選法違反で書類送検され、翌年、議員を辞職する一方、公民権停止3年の略式命令を受けた。今回、無記名だったのは、その経過を知っていたからだと思われる。

 だが「類推」とは何か、言葉自体があいまいで、そもそも有権者からすれば、政治家本人と秘書、政党支部を使い分けることに無理があると言うべきだ。

 いまだにこうした脱法的とさえ言える行為が続いていることに改めて驚く。一切の例外規定を設けず、すべての寄付行為を禁止する法改正をすべきだろう。