毎日新聞2018年1月31日 東京朝刊
 
 先週開会した通常国会では早くも安倍政権の緩みとおごりが目立つ。

 沖縄で相次いだ米軍ヘリのトラブルをめぐる野党の質問に「それで何人が死んだんだ」とヤジを飛ばし、松本文明副内閣相が更迭された。

 米軍事故の危険にさいなまれる住民を気遣うどころか、犠牲者が出なければ構わないと言わんばかりだ。失言で済まされる問題ではない。

 安倍晋三首相は「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と繰り返してきた。残念なのは、これが政権全体で共有されていないことだ。

 3年前には自民党若手議員の勉強会で沖縄の地元2紙が攻撃され、講師役の作家が「つぶさないといけない」と気勢を上げた。基地負担の苦しみと向き合わず、政権批判を抑えつける姿勢は今回のヤジに通じる。

 沖縄はいま名護市長選(2月4日投開票)の選挙期間中だ。同市辺野古に米軍普天間飛行場を移設する計画の是非が争点となっている。

 首相は「沖縄、国民の皆様に深くおわびしたい」と陳謝した。素早い更迭と首相の低姿勢は、市長選への影響を抑えたい意図も感じさせる。

 森友学園への国有地売却問題でも、強引に火消しを図ろうとする政府・与党の姿勢が目につく。

 昨年の通常国会では財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)が「事前に価格を提示したことはない」「交渉記録は廃棄した」と答弁していた。

 しかし、近畿財務局の担当者間で相談した内部文書の存在が毎日新聞などの情報公開請求で判明した。佐川氏の虚偽答弁を疑わせる文書だが、財務省は昨年11月、会計検査院が国会に報告書を出す前日になってようやく検査院に提出したという。

 真相解明には佐川氏の国会招致が不可欠だが、与党は拒否し続けている。佐川氏は国税庁長官に就任して以降、記者会見にも応じていない。

 麻生太郎財務相は「国税庁の所管以外に関心が集まっていたので(就任会見を)実施しないと決めたと聞いている」と答弁し、組織的に佐川氏を守っていることを隠さない。

 野党は佐川氏の更迭を求めたが、首相は「適材適所」と突っぱねた。

 「数の力」で野党の質問時間を減らそうと躍起になるのも「森友隠し」が狙いではないか。「丁寧に、謙虚に」の掛け声がむなしく響く。