2018年1月30日

 米軍機事故をめぐるやじで内閣府副大臣が辞任した。交代は当然としても、沖縄県民の気持ちに寄り添うと言いながら、米軍普天間飛行場の県内移設を強行する安倍政権の姿勢こそ問題ではないか。

 そのやじは二十五日、志位和夫共産党委員長による代表質問の最中に飛び出した。沖縄県で米軍ヘリの部品落下や不時着が相次いでいることを指摘し、「危険な基地が沖縄にある限り、危険は変わらない」として普天間飛行場の撤去や名護市辺野古への「県内移設」中止などを求めたところで衆院本会議場に「それで何人死んだんだ」との声が響いた。

 やじの主は松本文明内閣府副大臣。死者が出なければ部品落下や不時着が続いても構わないと受け取られかねない発言だ。内閣の一員である副大臣による国会内での発言として不適切極まりない。

 安倍内閣は「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、基地負担の軽減に全力を尽くす」とするが、その方針が政府内で共有されていないことが明白になった。安倍晋三首相の任命責任は免れまい。

 松本氏はやじの翌二十六日、首相に辞表を提出し、受理された。安倍政権が早めの事態収拾を図ったのは、県内移設の是非が争点となっている二月四日の名護市長選への影響を避けたいからだろう。

 きのうの衆院予算委員会でも、首相は松本氏のやじをめぐり「沖縄、国民の皆さまに深くおわびしたい」と謝罪し、沖縄県民に寄り添う姿勢を見せようとした。

 とはいえ、表面上取り繕っても名護市民や沖縄県民は欺けまい。安倍政権は県内移設に反対する県民の声を押し切って名護市辺野古への移設を強行しているからだ。

 普天間飛行場の閉鎖は急務だとしても、同じ沖縄県内に移設するのでは抜本的な負担軽減にはならない。県民の意見を代弁する翁長雄志知事に対しても、安倍政権は冷淡な態度で接し続ける。「沖縄県民の気持ちに寄り添う」との首相の言葉がむなしく響く。

 松本氏の辞表が受理された二十六日、小渕恵三内閣で官房長官を務めた野中広務氏が亡くなった。自ら戦争を経験し、沖縄戦や米軍基地の集中など苦難の歴史を強いられてきた沖縄に思いを寄せてきた政治家の一人だった。

 自民党内にも沖縄に寄り添う政治家は何人もいた。今、そうした議員がいなくなったことが、県民の思いを酌まないやじを生む要因になっているのだろう。松本氏個人の問題とは言えず、根が深い。