毎日新聞2018年1月21日 東京朝刊

 トランプ米大統領にとって最も親しい外国首脳は、間違いなく安倍晋三首相だろう。

 就任後の会談は5回に上り、電話協議は前任のオバマ大統領との4年間を上回る17回に及ぶ。

 首相は北朝鮮がいかに日米の安全を脅かすかを訴えた。トランプ氏が呼応し、関係の基盤ができた。

 米国での世論調査では、最も友好的と思う国は日本がカナダに次いで2位で、イスラエルよりも上だ。

 日米同盟は日本外交の根幹である。首脳が気安い関係を築き、意思疎通を容易にした意義は大きい。

 ただし、同盟関係であっても立場や役割は違うし、なにが国益に資するかの判断も異なるだろう。

 北朝鮮問題でトランプ政権は「すべての選択肢がある」と言う。軍事介入を否定していない。

 トランプ氏は「私の核のボタンは彼(金正恩朝鮮労働党委員長)のよりはるかに大きい」と豪語する。

 首相はトランプ政権の姿勢を「一貫して支持」し、「日米は100%共にある」と繰り返している。

 強気の姿勢を見せることで北朝鮮をけん制する狙いもあろう。しかし、軍事作戦も辞さない構えを押し通せば国民を不安にさせるだけだ。

 トランプ政権は国際的な関与を弱めて自国のリスクを減らし、同盟国にその分の負担を求めている。

 国内産業の活性化のために米国兵器の買い増しも要求している。安保も根底にあるのは「米国第一」だ。

 日本はこの1年、軍事面での協力の幅を広げてきた。昨年2月の首脳会談では同盟における日本の役割と責任の拡大を約束した。

 5月には安全保障関連法に基づく米艦防護を初めて実施し、8月の日米の外務・防衛担当閣僚の協議では防衛能力の強化を強調した。

 しかし、専守防衛を基本に据えてきた日本の防衛力が議論もなく拡大すれば周辺国には脅威となろう。

 国際協定から離脱し、地域の紛争をあおるようなトランプ氏の独断的な行動に世界の批判は強い。

 日米関係が突出すれば、日本外交の幅をむしろ狭めるおそれもある。米国だけが外交の相手ではない。

 米国の威信が低下すれば日本も孤立化を深めないか。そうしたリスクを冷静に議論する必要がある。