毎日新聞2018年1月12日 東京朝刊

 脱原発依存を進める新たな契機となるのか、注目したい。

 運転開始から来年で40年を迎える大飯原発1、2号機(福井県)の廃炉を関西電力が決めた。安全対策費がかさみ、再稼働しても採算が取れないと判断したためだ。

 2基はともに出力117・5万キロワットの大型原発。東京電力福島第1原発以外で100万キロワット級の原発が廃炉となるのは初めてだ。大手電力会社にとっても、老朽原発の維持は容易でないことが浮き彫りになった。

 福島の事故後、原発の運転期間は原則40年と定められた。ただ、原子力規制委員会の審査に合格すれば、最長で20年間の延長が可能だ。

 大飯1、2号機は原子炉格納容器が狭い特殊な構造で、安全対策やその後の点検修理が難しい。関電は延長見送りの理由をそう説明する。

 「経済性は算定していない」と岩根茂樹社長は記者会見で述べたが、厳しい経営環境が今回の決定の背景にあることは間違いない。

 電力小売りの全面自由化や省エネの進展の影響で、関電の電力販売量はピーク時から2割減少した。

 関電は、存続を決めた7基の原発について少なくとも計8300億円の安全対策費を見込んでおり、更なる対策費の積み上げは重荷だった。

 他の大手電力も似た悩みを抱えているはずで、大型原発の廃炉に踏み切るケースが今後も出るだろう。

 政府は2030年の発電量の20~22%を原発で賄う方針だ。達成には30基程度の原発再稼働が必要だが、現状は4基にとどまる。下方修正が迫られるのは確実である。

 経済界や大手電力には、原発の再稼働に加え、新増設や建て替えを望む声が強い。だが、安全対策の強化に伴い、原発の建設コストは高騰を続けている。中国を除けば、世界の原発建設は退潮傾向にある。

 日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトで、政府が債務保証する方針だという。それほど、原発新設の事業リスクは高いことを示している。

 原発の再稼働を前提とした送電線の運用が、再生可能エネルギーの導入を阻んでいるという指摘もある。

 原発依存度を下げ、再生エネや省エネの拡大を図るために、政府が知恵を絞ることは多いはずだ。