毎日新聞2017年12月27日 東京朝刊
 
 地域の安全保障環境をにらみつつ、専守防衛を踏まえた防衛力をどう整備するか。不断の議論が必要だ。

 2018年度予算案の防衛費は5兆1911億円となり、4年連続で過去最大を更新した。安倍政権が編成した13年度から6年連続の増額である。厳しい財政状況の中で防衛費を重視する姿勢が際立つ。

 新たな装備調達で目を引くのは、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」と、航空自衛隊の戦闘機に搭載する長射程の巡航ミサイル3種類の導入だ。

 イージス・アショアは夏の概算要求で金額が明示されず、長距離巡航ミサイルは要求すらされていなかった。正式決定したのは政府案を決める直前という異例の経過だった。

 背景には今夏以降、北朝鮮の核・ミサイル開発が急速に進み、朝鮮半島情勢が緊迫したことがある。

 巡航ミサイルは当初、中国の海洋進出を念頭に離島防衛が目的だったが、北朝鮮に届く米国製の長距離巡航ミサイルも購入する。

 導入は首相官邸の国家安全保障会議(NSC)が主導したという。北朝鮮に対する防衛力強化が、安倍政権の高いレベルで意思決定されたことを示すものだ。

 軍事力の増強は世界的な傾向だ。米国は国防費を約1割増額し、米国を除く北大西洋条約機構(NATO)も3年連続の増額だ。中国は1兆元(約17兆円)の大台を突破した。

 危惧するのは、軍事力に頼るあまり外交力がかすんでしまうことだ。

 北朝鮮が核兵器搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を配備すれば米朝間の対立は深刻になる。

 その前にどう手を打つか。軍事力だけでは無理がある。米国は圧力路線を強めつつ、対話もうかがっている。中国に石油禁輸を求めるのは北朝鮮を対話に引き出す狙いからだ。

 安倍晋三首相は北朝鮮情勢を「国難」と位置付け、「防衛力を質的、量的に拡充する」と言うが、外交的解決に導く戦略は語ろうとしない。

 防衛力の増強にあたっては、国民に十分な説明が必要だ。軍拡競争が加速すれば、地域の緊張が高まるだけでなく財政負担も重くなる。

 防衛費の合理化は当然だが、軍事と外交のバランスこそが重要だ。来年通常国会で大きな論点となろう。