2017年12月9日

 対立をあおり中東を一層不安定化させるだけである。トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定した。米国が中東和平の公正な仲介役を果たすよう求める国際社会の声を聞くべきだ。

 トランプ氏は六日の演説で、エルサレムにはイスラエルの公的機関が実在することを挙げ「首都認定は現実を認める以外の何物でもない」と正当化した。

 暗礁に乗り上げた中東和平問題には「新たなアプローチが必要だ」としたうえで「米国は和平実現に向け関与を続ける」とも強調した。

 だが、首都認定と、商都テルアビブにある大使館のエルサレム移転は、パレスチナが国家を樹立しイスラエルと平和に共存することを目指す「二国家共存」という和平の枠組みを放棄したに等しい。

 米国が和平の仲介役を投げ出し、イスラエルに一方的に肩入れする姿勢も鮮明だ。

 エルサレムはユダヤ教ばかりでなくキリスト教とイスラム教の聖地でもある。

 エルサレム全域を武力制圧したイスラエルは「永遠の首都」と位置付ける。一方、パレスチナ自治政府は東エルサレムを「将来の国家の首都」と主張する。

 一九九三年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)は、エルサレムなどの最終的地位をめぐる交渉を進めることを確認した。

 クリントン氏とブッシュ(子)氏も大統領就任前は大使館のエルサレム移転を選挙公約にした。しかし、当選後は安全保障や外交上の理由から棚上げにした。

 トランプ氏が踏み切ったのは、政財界に大きな影響力を持つユダヤ系団体の支持取り付けが大きな理由だろう。トランプ演説からは、歴代大統領が果たせなかった公約を自分は実現してみせると誇示したい気持ちもありありだ。

 「米国第一主義」どころか、自分の利益しか念頭にない「トランプ第一主義」である。

 中東は過激派組織「イスラム国」が実質的に崩壊し、最悪の混乱期は脱した。米国が朝鮮半島危機に傾注できる時機が来たのに、トランプ氏は民族・宗教間の分断と憎悪の種をまいた。

 イスラム過激派には格好の口実を与え、米国やイスラエルへのテロも懸念される。

 パレスチナをはじめ中東では抗議運動が広がり、衝突も起きている。トランプ氏にはその責任を負う覚悟があるのか。首都認定を即座に撤回すべきだ。